スポーツと地域

部活動の地域展開を支える「コーディネート機能」とは?

部活動の地域展開を考えるとき、まず目が向くのは「誰が指導するのか」という問題でしょう。

指導者の確保はたしかに重要です。ただ、学校の中で行われてきた活動を地域へ広げると、これまで学校が担ってきた役割そのものが、複数の人や組織へ分かれていきます。

活動場所をどう確保するか。学校と地域クラブを誰がつなぐか。指導者への謝金や保険をどう扱うか。保護者への説明や参加費、子どもたちの移動はどう考えるか。

課題を一つひとつ並べてみると、必要なのは「指導者を探す人」だけではないと分かります。

地域にある人、場所、組織、制度をつなぎ、子どもたちが活動を続けられる環境をつくる。そのための「コーディネート機能」が、部活動の地域展開では重要になるのではないでしょうか。

学校から地域へ移ると、「調整」も地域へ広がる

これまでの学校部活動で、顧問の教員が担ってきたのは指導だけではありません。

活動場所を確保し、生徒や保護者へ連絡し、大会へ申し込み、学校内で調整を重ねる。多くの役割が「学校」という一つの組織の中に収まっていました。

地域展開が進むと、その構造が変わります。

学校、行政、地域クラブ、競技団体、指導者、保護者、ときには民間事業者。立場の異なる人たちが、一つの活動に関わるようになるからです。

地域クラブ活動を運営するためには、指導者の確保だけでなく、施設の利用、謝金や旅費の支払い、保険への加入、移動手段、学校との連絡など、さまざまな役割が必要になります。

つまり部活動の地域展開とは、単に「指導する場所を学校から地域へ移すこと」ではないのでしょう。

学校の中にあった役割を、地域の中でどう組み直すのか。その設計まで含めて考える必要があります。

コーディネート機能とは、何をつなぐことなのか

「コーディネート」という言葉は、少し曖昧です。

地域スポーツの現場に置き換えると、大きく四つの「つなぐ」に整理できるのではないかと考えています。

人をつなぐ。
学校、指導者、地域クラブ、行政、競技団体などをつなぐ。

場所をつなぐ。
学校施設や公共施設など、活動できる場所と子どもたちをつなぐ。

制度をつなぐ。
保険、謝金、会費、施設利用のルールなど、活動を支える制度を整理する。

情報をつなぐ。
活動内容や参加方法をまとめ、子どもや保護者、関係者へ正しく届ける。

ただ、コーディネート機能は、誰か一人がすべての間に入って調整することではありません。

地域に必要な機能を整理し、それを誰が担うのか。人が担うべきことと、仕組みに変えられることをどう分けるのか。

地域にある資源をつなぎ、活動が継続して回る仕組みをつくること。

コーディネート機能を、もう少し広く捉える必要があるのだと思います。

「コーディネーターを置く」だけでは解決しない

一方で、コーディネート機能さえあれば、地域展開の課題がすべて片づくわけでもありません。

そもそも地域に指導できる人がいない。活動を続けるための財源が足りない。子どもが活動場所まで移動する手段がない。

こうした問題は、関係者同士をうまくつなぐだけでは解決できません。

また、コーディネートを特定の人に任せればよい、という考え方にも注意が必要でしょう。

地域や学校の事情に詳しい人が間に入ることで、活動を円滑に進められる場面はあります。一方で、その人がいなければ回らない仕組みになれば、継続性という別の問題が生まれます。

「コーディネーターが必要であること」と、「コーディネーターを置けば解決すること」は同じではありません。

人を配置することだけでなく、その人に集中している仕事を整理し、組織や仕組みとしてどう残していくのかまで考える必要があります。

「調整する」だけでなく、「調整を減らす」

コーディネートについて考えるうえで、参考になる取り組みがあります。

川崎市では、学校施設の利用に予約システムとキーボックスを導入し、利用手続きや鍵の受け渡しに伴う負担を減らす仕組みを整えています。

この取り組み自体は、部活動の地域展開だけを目的としたものではありません。しかし、地域スポーツの運営を考えるうえでも示唆があります。

「鍵を借りてもいいですか」

「何時に受け取りますか」

「誰が返しますか」

誰かが毎回こうしたやりとりを重ねるのではなく、やりとり自体が発生しにくい仕組みに変える。

つまり良いコーディネートとは、すべての問題の間に人が入って調整することだけを指すのではありません。

そもそも調整しなくても回る状態をつくることも、コーディネートの一つです。

問い合わせ先が分からないなら、窓口を決める。施設利用のたびに確認が必要なら、利用ルールを整理する。参加方法について同じ質問が繰り返されるなら、必要な情報をまとめて共有しておく。

人が間に入り続けるのではなく、ルールや情報、道具、ときにはデジタルの仕組みへ置き換えていく。

コーディネート機能を「調整が上手な人」として捉えるのではなく、活動を続けるための仕組みを設計する機能として捉える。その視点が必要なのだと思います。

地域にあるものを、どう組み合わせるか

地域によって、人材も施設も交通環境も異なります。

だからこそ、他地域の成功事例をそのまま持ち込むのではなく、その地域に何があり、何が足りないのかを見ながら仕組みを考える必要があります。

その一つの例が、長野県南佐久郡です。

南佐久郡では、佐久穂町、小海町、南相木村、北相木村、南牧村、川上村の6町村が連携し、自治体の枠を越えた地域クラブ活動を進めています。

複数の町村が連携することで、参加者や指導者を確保するとともに、運営を共同化しています。6町村が負担金を拠出し、運営委員会と総括コーディネーターを中心に地域クラブを支える仕組みです。

その中で、一つの課題になるのが移動です。

川上中学校と佐久穂中学校は約30km離れ、移動には45分ほどかかります。

そこで、活動日は5時間授業として移動時間を確保し、町村所有のバスや借り上げバスを用意。さらに、練習時間を電車の時刻に合わせてJRの利用を促し、乗車料金も補助しています。

合同練習の会場も一つの町村に集中させず、バランスよく配置する工夫が行われています。

ここで興味深いのは、移動という課題に対して、一つの方法だけで解決しようとしていないことです。

学校の時間割を変える。
バスを使う。
既存の鉄道を使う。
交通費を補助する。
練習場所を分散する。

学校、自治体、交通、施設、予算といった地域にある資源を組み合わせ、子どもたちが参加できる環境をつくっています。

さらに、その間をつなぐ総括コーディネーターが、地域クラブの運営、指導者との連携、謝金や旅費の支払い、保険、移動手段の手配、学校との調整などを担っています。

地域に何があるのか。

何が足りないのか。

どの資源とどの資源を組み合わせれば、活動できる環境になるのか。

地域展開という言葉の通り、地域を起点に仕組みを考えることが求められるのではないでしょうか。

「編集する」という視点から、地域スポーツを考える

Stretch Supportでは、スポーツの現場にある知識や経験を、必要とする人や社会へ伝わる形に「編集する」ことを大切にしています。

ただ、ここでいう編集は、文章を書くことだけを指すわけではありません。

地域スポーツという文脈に置くと、編集の対象はもっと広がります。

プロスポーツクラブが持つ専門知識。地域の指導者が積み重ねてきた経験。学校が持つ教育の視点。行政が持つ制度や施設。保護者や子どもたちが感じているニーズ。

それぞれに価値があります。

しかし、価値のあるものが地域に存在することと、それらがつながって実際に機能することは別です。

誰に、どの知識が必要なのか。

誰と誰をつなぐ必要があるのか。

どの役割を人が担い、どの部分を仕組みに変えられるのか。

そして、地域にある資源をどう組み合わせれば、活動を続けられる環境になるのか。

地域にあるものを一度整理し、必要な形へ組み直していく。

それは、

知識を編集する。
関係を編集する。
仕組みを編集する。

ということなのかもしれません。

部活動の地域展開では、学校にあった仕組みをそのまま地域へ移すのではなく、その地域にいる人や資源を見つけ、つなぎ直し、子どもたちの活動が続いていく仕組みをつくる視点が必要だと考えています。

コーディネート機能を考えることは、そのための一つの入口になると考えています。


参考資料

Stretch Supportについて

スポーツの現場にある知識や経験を、必要とする人や社会に伝わる形へ編集・翻訳しています。