スポーツに取り組む子どもには、自信を持ってプレーしてほしい。多くの保護者や指導者が、そう願っているのではないでしょうか。
技術が上達する。試合で良い結果を残す。できなかったことができるようになる。そうした経験が増えれば、子どもの自信も自然に育っていくように思えます。
しかし実際には、上達していても自信を持てない選手がいます。反対に、現在の実力以上に「自分はできる」と感じている選手もいます。
研究でも、実際の能力と本人が感じている能力のあいだには関連がある一方で、両者が強く一致するわけではないことが示されています。「自信があれば技術が伸びる」「成功体験を増やせば自信がつく」という関係も、それほど単純ではありません。
では、スポーツに取り組む子どもの自信は、どのような経験を通じて育っていくのでしょうか。
この記事では、技術の上達、成功や失敗の経験、自己効力感、振り返り、周囲の関わりに関する研究をもとに、子どもの自信が育つ過程を考えます。
スポーツにおける「自信」をどう捉えるか
スポーツにおける自信を考えるとき、まず区別しておきたいことがあります。「実際にできること」と、「自分はできると感じていること」です。
例えば、パスの成功率が上がった。フォームが安定した。以前より速く状況を判断できるようになった。いずれも、観察や記録によってある程度確かめられる、実際の能力やパフォーマンスの変化です。
一方、「自分なら次もできそうだ」「この相手にも通用するかもしれない」と本人が感じることは、能力についての本人の認識です。
日常ではどちらも「自信」という言葉で表されます。しかし研究では、自分の運動能力を主観的にどう捉えているかを示す「知覚された運動有能感」と、特定の課題や状況で必要な行動を実行できるという見込みを示す「自己効力感」などが区別されています。
実際の力が伸びれば、本人の認識も変わることはあります。ただし、技術の向上がそのまま自信に変換されるわけではありません。上達は自信を育てる材料にはなりますが、それだけで自信が育つとは限らないのです。
実際の能力と自己認識は、どのくらい一致するのか
子どもや若者を対象に、実際の運動能力と本人が感じている運動能力の関係を調べた研究を統合したメタ分析(複数の研究結果をまとめて全体の傾向を分析する手法)があります。結果として、両者には正の関連がありました。ただし、相関係数(2つの要素がどの程度関連しているかを示す数値)は r=0.25 で、弱〜中程度の関連にとどまりました。[1]
「能力と自信は関係がない」という意味ではありません。実際にできることが増えれば、自分の能力を高く捉えやすくなる傾向はあります。それでも、実際の能力だけでは、本人が自分をどう評価するかを十分には説明できない、ということです。
注意したいのは、このメタ分析で扱われた研究の多くが、走る、跳ぶ、投げるといった基礎的な運動能力を対象としていた点です。特定競技の技術を扱った研究は相対的に少ないため、サッカーの判断や野球の打撃、バスケットボールのシュートなどに r=0.25 という数値をそのまま当てはめることはできません。
また、実際の能力、本人の認識、身体活動などが互いに影響し合うという発達モデルについて、縦断研究(同じ対象を長期間追跡する研究)をまとめたレビューもあります。ただし、想定されている経路のすべてが長期的なデータで確認されているわけではありません。[2]
つまり、次のような循環は理論上考えられます。
上達する → 自信が育つ → より意欲的に練習する → さらに上達する
一方で、この循環の全体が、ジュニアアスリートの発達において一貫して実証されているわけではありません。記事や指導現場で扱う際には、「必ず起こる成長の法則」ではなく、条件によって成立する可能性のある流れとして捉える必要があります。
上達していても、自信を持てないのはなぜか
実際には上達しているのに、本人は「自分は上手くなっていない」と感じることがあります。
理由は一つではありません。次に挙げる要因のすべてが直接的な原因だと、現在の研究だけで断定することはできません。それでも、能力と自己認識のずれを考えるうえで、少なくとも四つの視点があります。
比較する相手が変わる
所属するチームのレベルが上がったり、選抜活動に参加したりすると、以前はできていた選手でも、周囲との比較のなかで自分を低く感じることがあります。本人の能力が落ちたのではなく、比較の基準が変わったのです。
周囲も同じように上達する
自分の技術が伸びていても、チームメイトも伸びていれば、相対的な立ち位置は変わらないことがあります。「前よりできるようになった」という個人内の変化よりも、序列や試合出場時間に目が向くと、上達を実感しにくくなります。
成功の理由を、自分の変化として受け取れない
良いプレーができても、「たまたま入っただけ」「相手が弱かったから」と受け止めれば、その経験は「次もできる」という見込みにつながりにくくなります。反対に、何を準備し、どの動きが変わり、なぜ結果につながったのかを理解できると、成功を再現可能な経験として捉えやすくなります。
上達とともに、自分に求める基準も上がる
以前できなかったことができるようになると、次の課題が見えてきます。学習が進んでいる証拠でもありますが、本人には「できないことが増えた」ように感じられる場合があります。
このほか、発育・発達の差、指導者の評価、試合で任される役割なども、経験の意味を変えます。したがって、子どもの自信を考えるときは、結果だけではなく、子どもが何を基準に自分を見ているかを確かめる必要があります。
「成功体験を増やす」だけでは十分ではない
子どもにスポーツで自信をつける方法として、「成功体験を増やすこと」がよく挙げられます。
たしかに、成功経験は自己効力感を形づくる重要な情報の一つです。しかし、「成功の回数を増やせばよい」と理解すると、重要な点を見落とします。
運動学習の「チャレンジポイント」という考え方では、学習に適した課題の難しさは、学習者の現在の能力と課題の複雑さによって変わるとされています。[3] 同じ練習でも、初心者には情報量が多すぎ、経験者には簡単すぎることがあるのです。
簡単すぎる課題で成功を重ねれば、その場では気分よく取り組めるかもしれません。しかし、新しい情報が少なければ、技術を変える学習機会も限られます。反対に、失敗が続いて何を修正すればよいか分からない課題では、挑戦を続けること自体が難しくなります。
大切なのは、成功率を一つの数字で決めることではありません。
- 少し工夫すれば届く難しさになっているか
- 成功と失敗の違いを本人が捉えられるか
- 結果から、次に変える行動が見えるか
- もう一度試せる機会があるか
これらの条件を整えることで、成功も失敗も次の学習に使える経験になり得ます。
なお、「成功だけでは不十分」というのは、「失敗させれば成長する」という意味ではありません。失敗そのものに、子どもを成長させる力が自動的に備わっているわけではないからです。失敗から役立つ情報を読み取り、安心して次を試せる環境があって、初めて学習機会になり得ます。
自信があれば、もっと上手くなるのか
自己効力感とスポーツのパフォーマンスの関係を調べたメタ分析では、45の研究に含まれる102の相関をまとめた平均値が r=0.38 でした。[4] 「自分はその課題を遂行できる」という感覚と実際のパフォーマンスには、中程度の正の関連があったことになります。
ただし、この数値から「自信を高めれば、長期的に技術が伸びる」とまでは言えません。
メタ分析が主に捉えているのは、自信とパフォーマンスの関連です。長い期間をかけた技術の習得を直接証明したものではありません。また、良いパフォーマンスが自信を高める方向も考えられるため、因果関係を一方向に決めることもできません。
それでも、自信には学習を支える役割が考えられます。
「試しても無理だ」と感じている選手と、「工夫すればできるかもしれない」と感じている選手では、難しい課題への向き合い方が変わります。自己効力感は、技術を直接つくるというよりも、挑戦するか、努力を続けるか、失敗後にもう一度試すかといった、学習機会への関わり方に影響する可能性があります。
一方で、根拠のない自信があればよいわけでもありません。現在地を過大評価すれば、必要な修正に気づきにくくなることもあります。目指したいのは、常に強く自信を持つ状態というより、「何ができていて、何を変えれば次に進めそうか」を本人が捉えられる状態です。
経験を次の学習につなぐ「認識と振り返り」
同じ成功や失敗を経験しても、次の行動は選手によって異なります。
経験を次の学習につなげるには、起きたことを観察し、意味を考え、次の行動を決める過程が必要です。自分の目標や行動を調整しながら学ぶ、この学び方は「自己調整学習」と呼ばれます。
競技レベルの異なる12〜16歳の有望選手222人を比較した研究では、最も高い競技レベルの選手は、振り返りの得点が高いことが示されました。[5] ただし、一時点での比較にとどまる研究です。振り返りが競技レベルを高めたのか、高いレベルで活動した経験が振り返りを育てたのかは分かりません。
その限界を踏まえても、上達と自信のあいだに「認識と振り返り」を置くことには実践的な意味があります。
例えば、練習後に次の三点を短く整理してみます。
- 今日、何をしようとしたか
- 実際には何が起きたか
- 次に一つ変えるなら何か
重要なのは、正解を言わせることではありません。自分の経験を観察し、言葉にし、次の試行を決める習慣をつくることです。
技術上の経験が自信と次の成長につながる過程は、次のように整理できます。
技術上の経験 → 本人の認識・解釈 → 次の行動 → 次の学習機会
この流れは、すべてが証明された一本の因果モデルではなく、複数の研究知見を実践に引き寄せて整理した枠組みです。自信を「成功の結果」としてだけ見るのではなく、経験を読み取り、次の行動を選ぶ過程として捉えるためのものです。
周囲の大人は、自信を「与える」のか
保護者や指導者は、子どもに自信を持たせようとして、「大丈夫」「できるよ」「すごい」と声をかけます。励ましが支えになる場面はありますが、言葉だけで安定した自信を与えられるとは限りません。
指導者や保護者を対象にした対人関係プログラムの研究をまとめたメタ分析では、楽しさ、不安、課題を重視する雰囲気など、一部の心理・社会的な結果に小〜中程度の効果が示されました。[6] 一方、この結果は、特定の声かけが必ず自信を高めることや、技術の向上まで直接もたらすことを証明するものではありません。
周囲の大人が担えるのは、自信を外から注入することよりも、子どもが自分の変化に気づき、経験を整理し、次を試せる条件を整えることだと考えられます。
指導者は、課題の難しさ、挑戦できる回数、フィードバックの内容を調整できます。保護者は、結果だけで評価されない安心感をつくり、子どもが経験を言葉にするのを支えられます。
以下は、研究によって効果が確立された「正解の声かけ」ではなく、ここまでの知見から導いた実践上の提案です。評価や結論をすぐに伝える前に、次のような問いを置く方法があります。
- 「今日は、何ができた?」
- 「前と比べて、何が変わったと思う?」
- 「上手くいったとき、何をしていた?」
- 「次は何を変えてみたい?」
また、「すごかったね」だけで終えるのではなく、「ボールを受ける前に周りを見ていたね」のように、観察できた変化を具体的に返すことは、本人が経験を振り返る手がかりになり得ます。
ただし、練習や試合の直後に質問を重ねると、子どもにとっては振り返りではなく尋問になることもあります。話したくないときには待つこと、本人の言葉を大人の正解に修正しすぎないことも必要です。
「できた」を、次の成長につなげるために
子どもの自信は、「できた」という結果だけから自動的に育つわけではありません。
重要なのは、技術上の経験を本人がどう受け止め、何が変わったと理解し、その認識を次の挑戦や振り返りへどうつなげるかです。そして、その過程は、課題の難しさ、フィードバック、比較の基準、周囲との関係によって変わります。
保護者や指導者が子どもの自信について考えるときは、次の三点を分けて見ると、現在の状態を捉えやすくなります。
-
実際に何が変わったか
技術、判断、行動、取り組み方に、観察できる変化があるか。
-
本人は、その変化をどう受け止めているか
自分の工夫や成長として認識しているか。運や周囲との比較だけで捉えていないか。
-
その認識が、次の行動にどうつながっているか
次も試そうとしているか。何を変えるかを考えられているか。失敗後に再挑戦できるか。
目標は、大人が子どもを「自信のある選手」に変えることではありません。
成功にも失敗にも目を向け、自分の変化を捉え、次に何をするかを考えられるようになること。その積み重ねのなかで、子どもは「自分は何でもできる」という感覚ではなく、「今はできなくても、試し方を変えながら前に進める」という、学習を支える自信を育てていきます。
ジュニア期の成長を短期的な上達だけで捉えないための考え方は、「早く上手くなる選手と、長く成長し続ける選手は何が違うのか?」でも整理しています。また、子どもが主体的に取り組み、夢中になっていく過程については、「『続けさせる』から、『続けられる・続けたくなる』へ」もあわせてご覧ください。
参考文献
- De Meester, A., et al. (2020). The Relationship Between Actual and Perceived Motor Competence in Children, Adolescents and Young Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Medicine, 50, 2001–2049. https://doi.org/10.1007/s40279-020-01336-2
- Barnett, L. M., et al. (2022). Through the Looking Glass: A Systematic Review of Longitudinal Evidence, Providing New Insight for Motor Competence and Health. Sports Medicine, 52, 875–920. https://doi.org/10.1007/s40279-021-01516-8
- Guadagnoli, M. A., & Lee, T. D. (2004). Challenge Point: A Framework for Conceptualizing the Effects of Various Practice Conditions in Motor Learning. Journal of Motor Behavior, 36(2), 212–224. https://doi.org/10.3200/JMBR.36.2.212-224
- Moritz, S. E., Feltz, D. L., Fahrbach, K. R., & Mack, D. E. (2000). The Relation of Self-Efficacy Measures to Sport Performance: A Meta-Analytic Review. Research Quarterly for Exercise and Sport, 71(3), 280–294. https://doi.org/10.1080/02701367.2000.10608908
- Jonker, L., Elferink-Gemser, M. T., & Visscher, C. (2010). Differences in Self-Regulatory Skills Among Talented Athletes: The Significance of Competitive Level and Type of Sport. Journal of Sports Sciences, 28(8), 901–908. https://doi.org/10.1080/02640411003797157
- Bengtsson, D., Stenling, A., Nygren, J., Ntoumanis, N., & Ivarsson, A. (2024). The Effects of Interpersonal Development Programmes With Sport Coaches and Parents on Youth Athlete Outcomes: A Systematic Review and Meta-analysis. Psychology of Sport and Exercise, 70, 102558. https://doi.org/10.1016/j.psychsport.2023.102558
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