スポーツと地域
部活動の地域展開では、誰が運営を担うのか? 「運営主体」を役割と機能から考える
「部活動を地域へ展開する」と聞いたとき、まず浮かぶのは、では誰が運営するのかという問いではないでしょうか。自治体なのか、スポーツ協会や総合型地域スポーツクラブなのか。競技団体や民間企業、地域の保護者が担うこともあるのか。
この問い自体は重要です。ただ、「誰が運営主体になるか」だけでは、地域クラブの実際の運営は捉えきれません。
地域クラブには、競技を指導する人だけでなく、参加者を受け付ける人、指導者を確保・管理する人、会費や報酬を管理する人、施設を調整する人、学校や保護者と連絡を取る人など、さまざまな役割が必要だからです。
つまり、地域展開で考えるべきなのは、「誰が運営するのか」に加えて、**「何を、誰が担うのか」**という問いです。
この記事では、国の制度、全国の状況、各地域の事例をもとに、部活動の地域展開における「運営」を、組織名だけではなく役割と機能から整理していきます。
国の制度では、自治体・運営団体・実施主体の役割が異なる
まず、国の制度上の整理を確認します。
2025年12月に策定された「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」では、市区町村等が部活動改革の「責任主体」とされています。一方、実際の地域クラブ活動については、「運営団体」と「実施主体」が分けて整理されています。
| 区分 | 主な役割 |
|---|---|
| 改革の責任主体 | 地域全体の方針決定、企画・調整、認定、支援など |
| 運営団体 | 地域クラブ活動を統括し、運営・管理の中核を担う |
| 実施主体 | 個別のスポーツ・文化芸術活動を実施する |
ここで押さえたいのは、次の2点です。
第一に、自治体が改革の責任主体であることは、自治体がすべての地域クラブを直接運営することを意味しません。自治体自身が運営団体になる地域もあれば、スポーツ協会、総合型地域スポーツクラブ、競技団体、NPO、民間事業者などが担う地域もあります。
第二に、運営団体と実施主体は、同じ組織でなくても構いません。全体の管理を一つの団体が担い、実際の競技活動は別の団体が実施する。そうした分担も制度上想定されています。
つまり、国の制度は、最初から「一つの組織がすべてを担う」形を前提にしているわけではありません。
全国では、実際に誰が運営・実施を担っているのか
全国の状況を見ても、運営の担い手は一つではありません。
2025年度の部活動改革の取組状況に関する全国調査では、地域クラブの「運営団体」として、行政部局の直営が36.2%、総合型地域スポーツクラブが25.7%、体育・スポーツ協会が22.4%、スポーツ少年団が18.9%、競技団体が16.2%などとなっています。
一方、「実施主体」では構成が変わります。スポーツ少年団33.8%、競技団体33.2%、総合型地域スポーツクラブ31.9%、体育・スポーツ協会28.5%などが上位となり、行政部局の直営は16.0%です。
複数回答の調査のため単純な分類はできませんが、全体を管理する主体と、現場で活動する主体を分ける構造が、すでに各地にあることがうかがえます。
自治体やスポーツ協会が全体を管理し、個別の活動は競技団体やスポーツ少年団が担う。あるいは、複数の地域クラブを別の組織がまとめて支える。
「誰が運営するか」に複数の答えがあるのは、地域クラブの運営が、そもそも一つの仕事ではないからです。
地域クラブの「運営」には、どんな仕事があるのか
地域クラブで最初に注目されやすいのは、「誰が指導するのか」です。しかし、指導者が見つかっただけではクラブは動きません。
参加者を募集し、申込を受け付ける。指導者と契約する。会費を管理し、報酬を支払う。施設を予約する。保険に加入し、大会に申し込み、保護者や学校とも連絡を取る。
活動時間が週に数時間でも、その裏側では年間を通じてさまざまな業務が発生します。
国のガイドラインや地域クラブ活動の創設・運営ガイドブックに示されている業務を、本記事では次の7つに整理します。
| 運営機能 | 主な仕事 |
|---|---|
| ガバナンス・全体設計 | 方針、ルール、意思決定、責任範囲 |
| 事務局・参加者管理 | 募集、申込、名簿、連絡、問い合わせ、苦情対応 |
| 指導者・人材管理 | 募集、契約、配置、研修、勤務管理 |
| 財務・決済 | 会費、会計、報酬・謝金の支払い、税務、補助金、協賛・寄附 |
| 施設・移動 | 施設予約、学校施設利用、鍵、備品、移動・送迎 |
| 活動・大会運営 | 活動計画、日程、大会登録、競技団体との調整 |
| 安全・品質管理 | 保険、安全基準、事故対応、ハラスメント防止、評価・改善 |
※この7分類は国が定めた区分ではなく、公的資料で示されている業務を、本記事で理解しやすいよう整理したものです。
これらすべてを同じ組織が担う必要はありません。むしろ実際の地域では、どの機能をどこに置くかによって、運営構造が大きく変わっています。
「誰が何を担うか」は、地域によってこれだけ違う
ここからは、運営機能の置き方が異なる5つの地域を見ていきます。
「成功事例」を選ぶためではありません。それぞれの地域が、運営に必要な仕事をどこに配置しているのかを比較するためです。
柏市|共通する運営機能を一つの組織へ集める
千葉県柏市では、一般社団法人柏スポーツ文化推進協会(KSCA)が、行政と協働する地域クラブを統括しています。
各クラブが個別に運営の仕組みを持つのではなく、共通するルールや指導者との契約などを統括団体が担う構造です。
複数の活動に共通する運営機能を、一つの組織へ集約した形といえます。
神戸市|活動は分散させ、共通する基盤をまとめる
神戸市では、2026年9月から「KOBE◆KATSU」が始まる予定です。
地域のスポーツ団体や文化団体、大学、保護者などがそれぞれ活動を担う一方、市が登録制度を整え、保険や会費決済など一部の基盤を共通化する設計になっています。
クラブそのものが分散している点で柏市とは対照的ですが、「すべての運営業務まで各クラブに分散させる必要はない」という考え方は共通しています。
横浜市|活動する組織と、支える組織を分ける
横浜市では、民間事業者による方式と、総合型地域スポーツクラブによる方式など、複数の実証が行われています。
総合型地域スポーツクラブによる実証では、各クラブが指導者を派遣する一方、横浜市総合型地域スポーツクラブ連絡協議会が、全体調整や報告の取りまとめ、報酬支払いなどを担いました。
指導者を派遣する各クラブとは別に、協議会が複数のクラブに共通する事務や調整を担う構造です。
ここからは、指導者や活動主体を確保するだけでなく、それらを支える運営機能をどこに置くかも重要な論点になることが分かります。
関連記事: 部活動の地域展開を支える「コーディネート機能」とは?
相模原市|「指導できる人」と「運営できる体制」は別
相模原市の実証では、学校部活動から派生してつくられた地域クラブで、指導者である教員が、競技指導に加えて、クラブ規約の作成、銀行口座の開設、保険、兼職兼業、謝金や税務関係の手続なども担いました。
実証では、こうした事務負担が課題として挙げられています。
指導者がいることと、クラブを継続して運営できる体制があることは別です。小規模な活動では一人が複数の役割を担うこともありますが、活動が広がるほど、その負担をどう分けるかが問われます。
長崎市|担い手は専門法人だけではない
長崎市では、事業者や団体などへ運営を依頼する方法だけでなく、保護者会が中心となって地域クラブを運営する方法も示されています。
「地域クラブ=専門的なスポーツ法人」とは限らないことを示す例です。
ただし、誰が担う場合でも、会計、保険、連絡、安全管理、引継ぎといった仕事はなくなりません。見るべきなのは組織の名称ではなく、必要な運営機能を継続して持てるかどうかです。
5地域を並べると、違いは次のように整理できます。
| 地域 | 運営機能の置き方 |
|---|---|
| 柏市 | 共通する機能を統括団体へ集約 |
| 神戸市 | 活動は分散し、基盤機能を共通化 |
| 横浜市 | 活動主体と中間支援機能を分ける |
| 相模原市 | 指導者側に運営業務が集中した際の課題が見える |
| 長崎市 | 地域団体や保護者も担い手になり得る |
どれか一つが全国共通の正解というわけではありません。地域にある団体、人材、施設、行政体制によって、合理的な分け方は変わります。
「運営主体」が決まっても、持続するとは限らない
ここまで見てきたように、どの団体が運営を担うかは確かに重要です。
しかし、運営団体を決めることと、運営が持続することは同じではありません。
全国調査でも、「持続可能な収支構造の構築」「指導者の量の確保」「保護者・生徒への普及啓発・理解」などが、地域クラブを進めるうえでの課題として挙げられています。
とりわけ見落とされやすいのが、日常的な事務を支える機能です。
相模原市の実証で見られたように、競技を指導する人が、会計や保険、税務などの運営業務まで担えば、その人に負担が集中します。
保護者が運営する場合も同じです。特定の人の経験や善意に依存した仕組みでは、担当者が離れたときに継続が難しくなる可能性があります。
一方、NPOや一般社団法人を設立すれば、自動的に解決するわけでもありません。
法人格よりも問われるのは、必要な運営機能を、誰が継続して担える状態になっているかです。
「運営主体を決めること」と「持続可能な運営システムをつくること」は、分けて考える必要があります。
自分たちの地域では、どこから考えるか
では、自分たちの地域では、どこから手をつければよいのでしょうか。
最初から「スポーツ協会に任せる」「新しい法人をつくる」と組織を決めるのではなく、まず地域クラブを動かすために必要な機能を確認する方法があります。
たとえば、次のような問いです。
- 方針を決めるのは誰か
- 参加申込や問い合わせの窓口はどこか
- 指導者を募集・契約・配置するのは誰か
- 会費を集め、報酬を払い、会計を管理するのは誰か
- 施設や活動時間を調整するのは誰か
- 大会や競技団体との調整をするのは誰か
- 事故やトラブルが起きたとき、最初に対応するのは誰か
そのうえで、
必要な機能を洗い出す
→ 地域にある人・組織・施設・仕組みを確認する
→ 主に担う人と連携する相手を決める
→ 誰も担っていない仕事を確認する
→ 運営しながら役割を見直す
という順番で考えていきます。
部活動の地域展開を「移す」だけで終わらせないためには、運営主体の名前を決めるだけでは足りません。
地域クラブを動かすために必要な仕事を一つずつ確認し、誰が担い、誰と連携するのかを明確にする。
関連記事: 部活動の地域展開は、「移す」段階から「運営する」段階へ
そうした運営機能の設計が、地域で活動を続けていくための土台になります。
参考資料
- 文部科学省・スポーツ庁「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」
- スポーツ庁「部活動の地域展開における地域クラブ活動の創設・運営ガイドブック」
- スポーツ庁・文化庁「2025年度 部活動改革の取組状況に関する調査」
- 柏市「柏市の部活動の地域展開」関連資料
- 神戸市「KOBE◆KATSU」関連資料
- スポーツ庁・横浜市 地域スポーツクラブ活動体制整備事業関連資料
- スポーツ庁・相模原市 地域スポーツクラブ活動体制整備事業関連資料
- 長崎市「長崎市立中学校の部活動地域展開」関連資料
Related Articles

部活動の地域展開における本質的な課題とは?
部活動の地域展開で問われているのは、指導者不足だけではありません。地域にある人・組織・施設・知識や経験をどう組み合わせ、持続可能なスポーツ環境として機能させていくのかを考えます。

部活動の地域展開を支える「コーディネート機能」とは?
部活動の地域展開に必要なのは、指導者の確保だけではありません。地域にある人、場所、制度、情報をつなぎ、活動が継続して回る仕組みをつくる「コーディネート機能」について考えます。

「部活の地域移行」が意味するもの|私たちが受け入れ、育てていくべき新しいスポーツ文化
部活動の地域移行は、制度変更にとどまらず、新しいスポーツ文化を育てる転機でもあります。持続可能なスポーツの形について考えます。