9月3日、長野市で開かれた「信州SOIPコンソーシアム キックオフミーティング&セミナー」に参加しました。
信州SOIPは、プロスポーツチームと企業・大学・自治体などをつなぎ、スポーツを起点に新たな事業や地域課題の解決を目指す取り組みです。
株式会社ストレッチサポート(以下、Stretch Support)は現在、信州SOIPの枠組みのなかで、フットサルクラブのボアルース長野とともに「地域共創型ジュニアアスリート育成モデル」の実証に向けた事業形成を進めています。
今回のキックオフは、スポーツと地域の関わりについて事例や考え方を学ぶ場であると同時に、共創相手としてマッチングされたボアルース長野の担当者と初めて顔を合わせる機会にもなり、セミナー終了後には、約30分のミーティングも実施しました。
そこで改めて感じたのは、共創とは、どちらか一方が持ち込んだアイデアをそのまま形にすることではない、ということです。
スポーツを、地域の中でどう位置づけるか
イベントでは、荒木重雄氏による基調講演「スポーツのチカラで地域の未来をつくる」をはじめ、スポーツオープンイノベーションをテーマとしたトークセッションやネットワーキング、プロスポーツチームと共創提案者とのマッチングが行われました。
なかでも印象に残ったのが、荒木氏が代表を務める一般社団法人桐生南スポーツアカデミー(KMSA)の事例です。
KMSAでは、中学生の硬式野球チームや小学生向けアカデミー、パフォーマンス測定を行う野球ラボなどを運営する一方、活動を支える仕組みとして、会費だけでなく、企業協賛、クラウドファンディング型ふるさと納税、行政の公募・補助、旧高校を活用した施設基盤など、性質の異なる資金や資産が組み合わされています。公開情報からは、2023年度の中学硬式野球団に関するクラウドファンディング型ふるさと納税で2,465.3万円の寄附が集まり、グラウンドや防球ネット、用具、遠征・合宿、指導者謝金、マイクロバスなど幅広い用途が想定されていたことも確認できます。
私自身、スポーツビジネスというと、プロスポーツであればスポンサーやチケット、育成事業であればスクールやクラブの会費といった形で、利用者やファンから収益を得る構造をまず思い浮かべていました。
KMSAの事例を見て考えさせられたのは、必ずしも「サービスを利用する人が、その費用のすべてを負担する」必要はないということです。
子どもたちの育成環境をつくることは、参加する子どもや家庭だけに価値を生むわけではありません。地域企業、自治体、地域のスポーツ文化やまちづくりなど、周囲にも異なる価値が生まれます。
そうであれば、「誰が利用するのか」だけでなく、「誰が価値を受け取り、誰がその活動を支えるのか」を分けて考えることができる。
KMSAの事業モデルを公開情報から整理すると、まさに利用者・受益者・支払者を分け、会費、協賛、行政による利用助成や補助、目的寄附、外部資産などを組み合わせていることが特徴の一つとして見えてきます。
もちろん、桐生の野球文化や旧高校という施設、企業や行政との関係など、KMSAだからこそ成立している条件も多く、その仕組みをそのまま自社で再現できるわけではありません。
それでも、スポーツ事業を「参加費やスポンサー収入だけで成立させるもの」と決めつけず、地域に生まれる価値と、それを支える人や組織を分けて考えるという視点は、今回の共創事業の新規性や事業性を考えるうえでも大きなヒントになりました。
子ども向けのプログラムをどうつくるかだけでなく、その活動を地域の中で誰が支え、どう継続させていくのか。そこまで含めて事業を設計する必要があると感じています。
お互いの課題を出し合うことから
応募時にStretch Supportが提案したのは、プロスポーツクラブと地域の指導者、専門家、保護者などをつなぎながら、子どもたちの育成環境を地域のなかにつくっていく取り組みです。
ただ、ボアルース長野の担当者との約30分は、「この提案をそのまま実現するには何をすればいいか」を話す場ではなかったと考えています。
Stretch Supportに実現したいことがあるのと同じように、ボアルース長野にも、現在感じている課題や、これから取り組みたいことがあります。
まずは双方の考えを出し合い、どこに共通する課題があるのか。何であれば一緒に取り組む意味があるのか。今回の実証では何を確かめるべきなのか。
今回の30分は、そのための最初のすり合わせの時間でした。
そして実際に対話をしてみると、応募時に考えていた実証の進め方にも、調整が必要な部分が見えてきました。
PoCでは、まず仮説を試せる形にする
当初は、ボアルース長野に関わるトレーナーや、医療・身体領域の専門家の知見も取り入れながら、共同でプログラムを設計していくことを想定していました。
専門家の知見を取り入れること自体は、今後も重要だと考えています。
一方で、今回の限られた実証期間のなかでPoCを進めるためには、必要な専門家や体制がすべて揃うことを前提にするのではなく、まずはStretch Supportが持っている仮説を、実際に検証できる形まで具体化する必要があります。
つまり、今回のPoCで最初から「完成されたプログラム」をつくろうとするのではなく、まず仮説を現場で試し、その結果をもとに改善していく。
実証を通じて一定の方向性が見えてきた段階では、アスレチックトレーナーやスポーツ医学領域の医師、大学など、外部の専門家による監修を取り入れ、内容の妥当性や信頼性を高めていくことも必要になると考えています。
PoCと、その先にある継続的な事業を同じ完成度で考えるのではなく、段階を分けて設計する。
これも今回の対話を通じて整理できたことの一つです。
まずは、現場の声を聞く
ただし、Stretch Support側の仮説だけでプログラムを決めるつもりもありません。
私たちは、成長期の子どもたちに対して、身体づくりやトレーニングの面でこうした取り組みが必要ではないか、という仮説を持っています。
しかし、それと現場が実際に感じている課題が一致しているとは限りません。
指導する側がすでに具体的な課題を認識しているのか。
それとも、「もっと身体をうまく使えるようにしたい」「動き方を変えたい」といった、まだ漠然とした違和感の段階なのか。
実際の子どもたちの動きや日々の活動を見て、初めて分かることもあるはずです。
だからこそ、プログラムを固める前に現場へ足を運び、指導者などへのヒアリングや実際の活動の確認を行う必要があると考えています。
Stretch Supportが持つ仮説と、現場で起きていること。
その両方を照らし合わせながら、今回の実証で取り組む課題とプログラムを絞り込んでいきます。
構想から、事業計画へ
当日の説明によると、信州SOIPには14件の共創提案が集まり、そのうち6件が審査を通過してプロスポーツチームとの共創マッチングに進みました。Stretch Supportとボアルース長野も、その6組の一つです。
- 14件の共創提案
- 6組が共創マッチング
- 現在地9月|事業形成対話・現場理解・事業計画の具体化
- 10月7日|中間発表・最終審査
- 実証事業へ
次の節目は、10月7日に行われる中間発表・最終審査です。
それまでの約1か月で取り組むのは、応募時の提案を細かく書き足す作業ではないと考えています。
ボアルース長野との対話や現場の声を踏まえながら、構想を実行可能な事業計画へ落とし込んでいく必要があります。
- 誰の、どのような課題に取り組むのか。
- 何を実施し、どのように成果を確かめるのか。
- ボアルース長野とStretch Supportが、それぞれ何を担うのか。
- 実証に必要な体制をどうつくるのか。
- 実証後にどのような形で継続・発展させていくのか。
さらに今回KMSAの事例から得た視点も踏まえれば、プログラム内容だけでなく、「その活動を誰が支えるのか」という事業モデルまで考えていく必要がありそうです。
社会課題への理解、新規性や共創性、社会的なインパクト、ビジネス性だけでなく、実施体制や実現可能性、中長期的な事業としての将来性まで含めて具体化していく。
この1か月は、提案書を仕上げるための期間というよりも、構想を共創相手と一緒に実行可能な事業計画へ変えていくための期間だと捉えています。
地域に必要な事業をつくる
今回のキックオフで、完成形が見えたわけではありません。
むしろ、応募時に描いていた構想を、実際の共創相手や現場に合わせて一度組み直す必要があることが見えてきました。
KMSAの事例からは、スポーツ事業の成立のさせ方について、新しい視点を得ました。
ボアルース長野との対話からは、応募時に考えていた実証の進め方をそのまま当てはめるのではなく、PoCとして何を優先し、何を次の段階に置くのかを整理する必要性が見えてきました。
そして、その前提として欠かせないのが、現場で実際に起きていることを知ることです。
まず現場を知り、課題を確認する。
Stretch Supportが持つ仮説と照らし合わせ、実証できるプログラムにする。
実際に試し、その結果を評価し、改善する。
さらに、その活動を地域のなかで誰が支え、どう継続していくのかまで考える。
「良さそうなプログラムをつくる」のではなく、地域に本当に必要とされ、継続できる事業をつくる。
10月7日までの約1か月は、そのための事業形成を進めていきます。
この共創の背景
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